地震予知読本・動物は警告する!

はじめに
阪神淡路大震災の衝撃

 1995年(平成7年)の年が明けたばかりという17日の早朝5時46分、私だけではなく、多くの人々が一生忘れることのできない天変地異に襲われる。あの兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)の発生である。

 マグニチュードは7・2。神戸市や宝塚市、そして淡路島までおよぶ広範囲な地域が震度7の直下型の大地震に襲われ、木造家屋やコンクリートの建物が倒壊した。

 地震が発生した瞬間、私は被災地である兵庫県川西市の自宅2階にある寝室のベッドでまどろみの中にいた。地震の瞬間、ベッドがドスンと突き上がるような激しい縦揺れを感じて目を覚ました。縦揺れにつづいて、ギシギシと家全体がきしむ激しい横揺れの襲来である。

 かなり長い時間にわたって横揺れを感じる中、私は本能的に「震度は5程度、おそらく有馬│高槻構造線が動いたことによる地震だろう。マグニチュード6程度の中規模な地震かな」とおぼろげな意識の中で考えたことを、いまも鮮明に覚えている。

 1月の早朝6時ごろは空は明けておらず、まだ暗い。電灯をつけようと試みるものの、停電で真っ暗である。枕元にある目覚まし時計兼用の携帯ラジオを手に、手探りで階下に下りた。

 余震に備え、我が家でもっとも安全そうな平屋部分の居間にある椅子にすわり、ラジオに耳を傾けたところ、震源地が淡路島北端であることを知る。姫路工業大学に勤務していた27年ほど前、兵庫県の依頼を受けて淡路島の瓦粘土と鋳物の砂の地質調査をした経験があったので、とっさに「明石海峡の大橋付近だな」とイメージすることができた。

 淡路島北部には西海岸沿いに野島断層、東海岸沿いに楠本断層という2本の活断層が縦に走っている。そして、これら淡路島の活断層は、明石海峡があるために連続性が不明瞭ではあるが、本土の神戸や西宮、宝塚の地に伸びる複数の活断層の六甲活断層群と連なっている。

 「淡路島ではどちらの活断層が動いたのだろうか、そして六甲活断層群も活動したのだろうか」、あれこれ思い浮かべながら状況を把握しようと試みたのだが、何といっても十分な情報が入手できない。

 自宅を出て付近の民家を観察してみた。倒壊した家はなく、少なくとも外見上は、いつもと同じ平穏な朝のようである。ただ、ガスの異臭が広がり出して危険であると、市の広報車が伝えていたことだけがふだんと異なる風景であった。

 震源に近い地域もこの程度ですめばいいのだがと希望をもちつつ、情報の入手に努めた。自宅の停電が復旧した午後にさっそくテレビをつけたところ、私の希望がいっぺんに吹き飛んでしまう映像を目の当たりにすることになる

証言1 ほ乳類

マルチーズ(白)とイタリアン・グレーハウンド
マルチーズ(白)とイタリアン・グレーハウンド

数分前、近所の飼い犬が激しく吠え立てた。
羽曳野市・男

 地震の何分前かはっきりわからないが近所の飼い犬数匹が激しく吠え目を覚ました。その後に地震が来た。

5時間前、何匹もの犬がオオカミのような遠吠えをしていた。
大津市・女

 家で飼われている犬(もちろんつながれている犬です)がオオカミの遠吠えのような声で鳴いていた(ワンワンとは一度も鳴かない)。1匹が鳴きだすと何匹もの犬が同じように鳴いていた。隣の犬はめったに鳴かない犬だったので、変だなあと思っていた。5時間前のことである。その日の夜大きな満月が出ていたけれど、満月の日と何か関係があるのか是非調べてほしい。

証言2 鳥類

ハシボソカラス
ハシボソカラス

地震15分前、向かいのマンション屋上にカラスが群がり、けたたましく鳴いた。
神戸市灘区・主婦

 地震以来ずっと不思議に思っていましたことを申し上げます。1月17日の早朝(地震の当日です)向かいのマンションの屋上のアンテナをすみかにしているカラスが余りにもけたたましく鳴くので「今日はどうしてこんなに大勢で鳴くのかしら」と不思議に思い時計を見ましたところ5時半ちょうどでした。いつもは2羽程度のカラスですが、その日は10羽ぐらいいたような騒がしい鳴き声でした。そのまま目を覚まし起きる準備をしていたところにあの地震でした。

当日の早朝、いつも餌をとりに来るカラスやスズメが、1羽も姿を見せなかった。
西宮市・主婦

 地震の前の16日夕方、空を見ると鳥の大群が北西の方向へ飛んで行くのが見えた。大きさからして1種類ではなかったように思う。また1週間ほど前から他の小鳥たちはほとんど見かけずカラスばかりが目についた。

証言3 魚類

なまず

前日の岡山後楽園の池中央に、ナマズ40匹がたむろしていた。
山口市・会社員

 平成7年1月16日、午後3時頃岡山の後楽園の池中央(お茶畑の横の池)に赤、白の鯉とまじり、池の表面にうず巻きにナマズ約40匹がたむろしていました。肉眼ではっきり見えました。初めは大ウナギと思い主人に「こんな所にウナギが」と申しましたが、よく見るとひげが頭のところより2本長く伸びているのを2人で確認しました。その時のナマズの色と形が気持ちが悪く、現在でも頭にこびりついています。私ども、山口県に在住している関係で強い地震は今迄ありません。ジョークで地震が起こらねばいいがねェ……と、その場を通り過ぎましたがその翌日、17日早朝方、広島市南区西蟹屋1丁目のマンションで地震に遭いました。揺れがおさまった直後窓ごしに外を眺めると、ピカッと光るものを見ました。最初は雷かと思いました。

5時間前、アマゾンナマズが突然暴れ出し、手がつけられない状態だった。
豊中市・会社員

 去年の9月頃、近所の熱帯魚屋で購入したアマゾン産「レッドテールキャット」(体長約35センチ)が1月17日午前零時30分頃から約15分間位、水槽内でものすごく暴れ出し、手もつけられない状態でした。ちょうどおふろから出た私は、それを見て「おなかがすいているのかな?」と思いエサを与えたのですがいっこうに食べようとはせず、近づいた私を見て尾を振り回し、見ている私に水をかけてみたり水槽の上下をすごいスピードで泳ぎ回ったりと、ますます暴れ出す始末で、今までに見たこともない行動でした。次の日には仕事なので気にはなっていたのですが、電気を消し休みました。震災はその約5時間後の事でした。リビングに置いてある3つの水槽の内、被害にあわなかったのはそのナマズのいる水槽だけでした。その後、やはり余震の始まる15分前には異様な動きをしますが、最初ほどではありません。気味が悪いのですが、現在、我が家では唯一の地震予知警告機のナマズであります。会社の上司から新聞欄のことを教えてもらい何かの参考にと思い送らせていただいた次第です。